しずく

「ものを持てる数は決まっていて、ひとつ手に入れれば、ひとつ手から離れていく」

そんな歌の歌詞を思い出す。

ぼくは少なくともひとつ失った。なにか大事なものだ。それが表面的なものか、内面的なものかはわからない。一見すると表面的なもので、簡単に理解できる類のものだろう。

ボールが頭に当たって血が出るように。それは見るからに痛そうだから誰にでもわかる。だけれど、傷が塞がってもいつまでも痛みは消えない。それはぼくが失った内面的なものと多分同じ類のものだ。感覚的に。

ぼくは持ちきれなかったいくつかを手放した。というより、手からこぼれて落ちていった。

手のひらの指と指の間の隙間をいくら見てみても、そこに何も残っていない。ひとしずくも。

蛍の光のような暖かさは、もうそこには残っていない。

 

sapplab について

hobby:music/reading&witting/photo/running
カテゴリー: 未分類 パーマリンク

コメントを残す